チャットボット導入は効果を期待できるのか!
属人化解消で解説

このコラムでは、チャットボット導入で期待できる効果や導入時に考慮すべきポイントの紹介をして行きます。さらに、属人化問題の解消を例に、チャットボット導入の取り組みを解説し、チャットボット導入の有効性を検証します。
属人化問題とは・・・業務知識やスキル・ノウハウが特定の人間に集中し共有化されず、その人以外は業務を遂行できない状態のことを指します。
このコラムでは、属人化の原因や属人化で発生するリスクなども合わせて、わかりやすく解説していきます。

目次
1.チャットボットの効果 企業とユーザー1)企業のメリット
2)ユーザーのメリット
2.チャットボット導入のデメリットと対策
1)稼働までに時間がかかる
2)全ての質問には自動で答えられない
3)一括で複数の質問には答えられない
4)具体的な答えが無いような場合には不向き
3.チャットボット導入時に考慮するポイント
1)目的を明確にする
2)運用体制を整備する
3)行動を分析し改善を進める
4.チャットボットを活用した属人化問題の解消
1)属人化が発生する原因
2)属人化のリスク
3)属人化を解消する方法
4)チャットボットを活用すると
まとめ ASBOTからのメッセージ
1.チャットボットの効果 企業とユーザー

チャットボット導入による効果が期待できる領域は、大きく分けると以下の3種類に分類されます。
それぞれの領域で期待できる効果を説明し、次章以降で、チャットボットを導入し効果を得るための取り組みポイントの説明を行います。
1)業務の効率化が図れる。
2)顧客満足度の向上が図れる。
3)顧客のニーズを分析できる。
1)企業のメリット
① 業務の効率化が図れる
チャットボットは24時間365日稼働が可能なため、ユーザーが必要な時間にどこでもで利用することが可能となります。また、問合せへの回答にマニュアル・画像・音声など必要な情報を提供することも可能となります。
その為、日々問合せを受けている人事・総務・情シスなどの社員の負荷軽減やコールセンターのオペレータの工数削減、その人員削減が図れます。更に削減された人員を活用し、コア業務の強化を図ることも期待できます。
熟練者のノウハウをナレッジデータとしてチャットボットに登録することで、自社で培ったスキルを全社で共有し、業務効率のさらなる向上も期待できます。
② 顧客満足度の向上が図れる
当然、24時間365日稼働することで、顧客が好きな時間に、好きな場所で企業へ質問や依頼を行えます。その利便性の良さから顧客満足度の向上が期待できます。合わせて、チャットボットの応答は、同じ品質で返されるため、顧客に不快な思いを持たせないで接客を行えます。また、オペレーターの順番待ちもなく、素早く応答しますので、顧客のストレスも抑えることができます。③ 顧客のニーズを分析できる
ユーザーは、事前に登録されたQ&Aデータやシナリオに従って、チャットボットと会話を行います。企業は、顧客がチャットボットと行った会話のログ情報を分析することで、顧客が困っていることの原因を取り除くプロセス改善や売上拡大に向け顧客の嗜好を把握するマーケティングへの活用が可能となります。
2)ユーザーのメリット
① いつでも回答を得られる
従来、困りごとがあり問い合わせを行う時に、営業時間内、就業時間内という時間の制約を受けたり、在席しているかの確認を行ったりする必要がありました。しかし、24時間365日稼働するチャットボットの場合、ユーザーの都合の良い時に問い合わせができる様になります。
また、シナリオに沿って回答を導いたり、会話から回答を導くので、事前に問い合わせの準備することなく、いつでも気軽に問い合わせを行えます。
② 迅速に回答を得られる
コールセンターへ問い合わせを行うと電話が繋がらず長時間待たされたり、社内の場合は担当者が離席中のため折り返しの連絡待ちなどは、多くの方が経験されているかと思います。しかし、チャットボットは、瞬時に回答を返信するので、回答を得るまでの待ち時間を大幅に短縮させることができます。そのため、今困っている作業を滞りなく継続することができます。
③ 良質な回答を得られる
チャットボットは、日常行われている問い合わせを整備し、Q&Aデータやシナリオとして登録されたデータをもとに回答を行います。その為、すべての回答は、一定品質を保った内容で返信することが可能となります。ユーザーは品質の高い回答を得て、その後の作業を継続することができます。
この様に、チャットボットは、企業・ユーザーの双方に効果が期待できるツールと言えます。次の章では、この様な効果を得るために、導入時に考慮すべきポイントを説明していきます。
2.チャットボット導入のデメリットと対策

チャットボットも他のシステムと同じでメリットだけでなく、デメリットも存在します。デメリットを理解することで、それを補う運用などの対策を整え、ユーザーに不信感を与えず、導入効果を引き出すことができるようになります。
1)稼働までに時間がかかる
AI型チャットボットもシナリオ型チャットボットも稼働させるためには、事前にデータを準備し、チャットボットに設定する必要があります。
事前に準備するデータは、以下のものになります。
① チャットボットの導入を考えている業務で行われている会話「質問と答え(FAQ)」を整理したもの
② ユーザーが求めている回答を導くためのロジック「シナリオ」を定義したもの
③ AIがユーザーからの質問を理解するために行う学習に必要なデータ「類似語」を集めたもの
また、これらのデータをチャットボットに設定し、テストを行いながらチューニングして回答の精度をあげていく取り組みを行います。
初めてチャットボットを導入するときは、ベンダーに相談しサポートを受けながら取り組むことも、おすすめします。
2)全ての質問には自動で答えられない
人間同士の会話でも同じですが、チャットボットも長文で質問されたり、逆に極端に短い文で質問された場合、質問の意図を理解できず、対応ができない場合があります。また、導入担当者が想定していない質問も、事前にチャットボットへデータが設定されていないため、意図する回答を提示できません。
チャットボットを導入するときは、全ての質問には答えられないことを前提に、チャットボットから問合せ先をチャットやメールを利用して、有人へ切り替えるなどの運用を考慮する必要があります。また、AI型の場合は、質問文の作り方を事前にユーザーへ教育することでチャットボットの回答品質の向上も図れます。
3)一括で複数の質問には答えられない
チャットボットは複数の質問を、まとめて受け取って回答を行うことはできません。ユーザーは1つずつチャットボットに質問を行い、回答を得てから次の質問を行うことになります。ユーザーからは面倒に感じるとの反応があるかもしれません。しかし、それ以外のメリットを説明し、ユーザーにとって効果がある施策と納得させることが必要な時もあります。
4)具体的な答えが無いような場合は不向き
ユーザーが求めているものを実現するために、ユーザーと相談しながら答えを模索して行くような業務にはチャットボットは向きません。
チャットボットの特性を理解し、その業務にチャットボットが合うか否かの見極めは重要です。
3.チャットボット導入時に考慮するポイント

チャットボットを導入し期待した効果をだすためには、いくつかのポイントがあります。間違った製品・サービスの選定や間違った使い方を行えば、当初、想定していた効果は得られず、チャットボットの導入は失敗との評価を受けてしまいます。
ここではチャットボット導入を成功させるためのポイントをいくつか説明していきます。
1)導入の目的を明確にする
チャットボットは、さまざまな特徴をもった製品・サービスがベンダーから提供されています。その中から、自社の業務改革の目的にマッチした製品・サービスを選ぶことが成功するための重要なポイントになってきます。
よく聞かれる導入目的は以下のような目的になります。
<導入目的の例>
①社内向け
・問い合わせに関する社員・オペレーターの工数削減
・ノウハウの共有による社員のスキル向上
②社外向け
・訪問者の受付業務の効率化
・コールセンターの効率化
・ECサイト訪問者の顧客満足度向上
・マーケッティングのデータ収集
このように、導入目的を見てみると、チャットボットに求められる機能も導入目的により異なってくることが想像できます。
そのため、導入目的を明確にすることが、チャットボット導入の成功に導く、第一歩となることを理解いただけたかと思います。
2)運用体制を整備する
導入したチャットボットが、継続的に効果を発揮していくためには、ユーザーの信頼を得ることが重要なポイントになってきます。ユーザーが信頼するチャットボットとは、「求めている回答を簡単に返信」してくれるチャットボットです。求めている回答を返信してくれなければ、ユーザーはチャットボットから離れ、使われないシステムとなってしまいます。
チャットボット稼働時に登録したQ&Aデータやシナリオは、机上の想定から作られたデータから、導入前のテストで運用に適したデータになるように調整していきます。しかし、テストだけの調整では、調整漏れなどもあり、完全な状態での稼働開始は、難しい面もあります。また、ビジネス環境も時間とともに変化して行くので、変化に合わせてQ&Aデータやシナリオもメンテナンスしていく必要があります。
そのため、チャットボットが、ユーザーからの信頼を継続的に得るには、Q&Aデータやシナリオをメンテナンスする体制を、導入準備を進める中で構築・育成し、稼働後も継続的に活動させることが重要になってきます。
また、メンテナンスに必要な情報を提供してくれるチャットボットを選定することも重要なポイントになります。体制作りと合わせてメンテナンス活用に必要な機能要件も検討する必要があります。
3)行動を分析し改善を進める
ユーザーは、知りたいことをチャットボットに質問し、その回答を参考に次の行動の判断を行います。そのため、ユーザーとチャットボットの会話の履歴には、ビジネスのチャンスや改善を進めるための重要な情報が蓄積されています。
この蓄積された情報を分析することで、ユーザーの嗜好を迅速に把握し、ビジネス拡大の参考にすることも可能となります。また、困っている事象を把握することで、その原因を取り除き顧客満足度や社員の業務効率をあげる取り組みを行うことができます。
チャットボットを上手に活用することで、ビジネス課題や業務プロセスの問題点を顕在化させることが可能となります。チャットボットの品質を上げるメンテナンス活動とは別に、ビジネスや業務の改善を進める部門へ情報を提供することで、大きな導入効果を得ることが期待できます。
4.チャットボットを活用した属人化問題の解消

この章では、属人化問題の解消を例に、チャットボットをどのように活用していくかを解説していきます。
1)属人化が発生する原因
属人化はなぜ発生するのでしょうか?
その理由は、労働環境や業務内容など様々な要因が考えられます。
① 業務内容が高度に専門的である
業務を遂行する上で、特別なスキル、特殊な研修・経験が求められる場合あります。
人員の育成に多くの時間や高額な費用が発生するケースもあり、属人化が起こりやすく解消も難しくなります。
② 業務内容を共有する時間がない
属人化が起こらないようにするには業務を遂行する上で必要な知識・手順などは共有しておく必要があります。
しかし、そのための資料・マニュアルを準備しても共有するための時間がなかなか取れないと「自分でやった方が早い」という状況に陥り、属人化に拍車がかかってしまいます。
③ 意図的に属人化させている
稀に、業務をあえて属人化することで立場・地位を守ろうとする人もいます。
また、管理・監督工数をめんどくさがり、特定の人に業務を丸ごと任せてしまっているなどのケースもあります。
2)属人化のリスク
属人化をそのまま放置しておくと、会社や組織に影響が生じます。
属人化のリスクについて詳しく見ていきましょう。
① 業務品質・効率の低下を招く
担当者の異動・離職による業務・サービス提供の停止などは、まさに業務の属人化によって起こるものです。
顧客・関連部門に対して必要な商品・サービスなどが提供できなかったり、決められた期日が守れないなどの問題が発生すると、顧客満足度の低下や企業の信頼失墜につながります。
また、新たな担当者が対応した場合でも、従来と同じレベルの業務品質を担保することは難しく、労働時間も増えその他の業務にも影響が及び、業務効率の低下を招きかねません。
②ミスや不適切な処理が見つけにくい
属人化が当たり前になり、各自が自分の業務に専念していると、情報共有の必要性を感じにくくなります。
当人にそのつもりがなくても業務がブラックボックス化してしまい、業務の進捗や状況に問題がある場合でも周囲が気づきにくくなってしまいます。そのため、チェック体制が適切に機能せず、業務上のミスや不適切な処理の発見が遅れることがあります。
③ノウハウが蓄積されにくい
業務の属人化は職歴の長い社員や専門的知識を持った社員に起こりやい傾向にありますが、このようなベテラン社員が退職してしまうと、企業としてはそれまでに蓄積された知識や技術を失うことになります。
ベテラン社員から若手社員にせっかくのスキルやノウハウが引き継がれず、企業としては蓄積された知識や技術を失うだけでなく人材育成のチャンスを逃すことになります。
3)属人化を解消する方法
属人化を解消するには、以下の4つのポイントを押さえることで、実現することができます。
① 仕事の仕方をシンプルにする。
② 仕事の手順をドキュメント化する。
③ ノウハウを蓄積する。
④ 業務責任を分散する。
① 仕事の仕方をシンプルにする
今の仕事の仕方を整理し、関連する部署・部署間でやり取りされている情報の種類・伝達方法・情報の作り方を図式化し、仕事の流れを共有します。関連メンバーでボトルネックとなっている箇所はないか。複雑な作業となっている箇所はないかとチェックし、シンプルな仕事の仕方に改善を進めます。
② 仕事の手順をドキュメント化する
シンプルな仕事の仕方に改善ができたら、その手順をマニュアル・手順書等にドキュメントとして作成し保管します。
仕事の手順をドキュメント化することで、別の部署から異動した社員でも理解出来るようになります。
③ノウハウを蓄積する
業務の中には、専門的な知識が必要であったり、過去から引き継がれてきた秘訣など、その部署で特有のノウハウが存在します。
このノウハウが個人のスキルとならないように、ノウハウを蓄積し、関連する社員で共有する環境作りを進めます。
④ 業務責任を分散する
特定の社員に業務責任が集中し、他の社員がその業務に関心を持たなくなる職場とならないように、仕事の仕方をシンプルに改善した時は業務責任の持ち方の改善も進めます。
この様な取り組みを継続して進めることで、業務の属人化は解消することができます。
4)チャットボットを活用すると
属人化を解消するための一般的な4つのポイントを記載しましたが、次に属人化の解消にチャットボットを、どの様に活用し効果を出して行くかを説明していきます。
① 仕事の仕方をシンプルにする
まずは、仕事の流れを可視化し、シンプルな仕事の仕方に改善を進めます。
② 仕事の手順をドキュメント化する
改善された仕事の進め方を、Q&Aデータもしくはシナリオとして、チャットボットのデータベースに登録を行います。
これで、仕事の仕方が関連する社員に共有された状態になります。
しかも、社員は、困ったときにいつでも質問ができ、直ぐに回答を得ることができ、作業が停滞するストレスから解放されます。
③ ノウハウを蓄積する
属人化問題を解消させるポイントの一つに、ノウハウの蓄積があります。ノウハウは、さまざまな形式の電子データとして保存することになりますが、重要なのは保存されたノウハウの検索方法になります。
メニュー化やキーワード検索では、必要な情報に素早くピンポイントで見つけることが難しく、蓄積されたノウハウの活用の障害となります。
しかし、AIチャットボットは、ユーザーの質問内容を分析し、適切なノウハウデータを提示するので、ノウハウ活用時の障害を大幅に 低減することができるようになります。
④ 業務責任を分散する
シンプルな仕事の仕方に合わせて、業務責任を集中しないように決めて属人化の防止を図ります。
しかし、ビジネス環境の変化や人の異動により、改善した仕事の進め方も少しずつ陳腐化していきます。
この状況の変化をチャットボットのログ情報を分析し対策を行うことで、属人化の防止を図ることができます。
仕事の手順に関する質問
・想定外の質問が増え回答が提案できない
>> 新しい仕事が追加された
>> 間違った仕事の進め方が行われている
ノウハウに関する質問
・今までと違う回答を求めている
>> 仕事の手順が変わった
・想定外の質問が増え回答が提案できない
>> 技術が進歩し新しい知識を求めている
・今までと違う回答を求めている
>> 現状より改善の質を高めたい要求が出ている
このように、会話の内容から仕事の変化を把握することができます。また、仕事の変化の内容に合わせて、仕事の仕方を是正したり、チャットボットの設定内容の変更を行います。この様な活動を進めることで、正しい情報・欲しい情報の共有化・可視化が進み、属人化による様々なリスクを回避することができます。
まとめ ASBOTからのメッセージ
今回は、チャットボットに期待できる効果と効果を引き出すためのチャットボット活用のポイントを紹介しました。また、多くの企業でも課題となっている属人化問題を例にチャットボットの効果的な活用についても紹介させて頂きました。
チャットボットの有効性について、改めて認識頂いたでしょうか。
チャットボットの特性を理解することで、企業活動の様々な業務領域にチャットボットを導入し、新たな着眼点で改善を進めることができます。
是非AIチャットボットの導入で属人化も含め、さまざまな問題の解消に取り組んでみませんか?
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